最初に縫ったもの

私が初めて針と糸を使ったのは小学校に入る前でした。
3歳下の妹と会話できていた頃だから、、、
たぶん5歳くらいだったのかな。

寒い季節になると、ズボン下を履いていました。
ズボン下と呼ぶのはうちの地域だけ?
「下ズボン」とか「ももひき」と言う地域もありますよね。
北国の子どもはみんな履いていて、私のは赤いズボン下でした。

ある日、そのズボン下の股の部分に穴が空きました。
だんだんその穴は広がって、気になってしょうがない。
縫ってもらえるように母にお願いしたのですが、
なかなか手をつけてもらえません。

よく手芸をする母の様子を見ていたし、
針と糸の使い方を教えてもらったこともありました。

……自分でやってみようかな。
しびれを切らした私は、自分でやることにしました!

母の裁縫箱のフタをあけて、糸が通っている針を取り出し、
ごろんごろんの結び玉らしきものをなんとかして作りました。

見よう見まねでズボン下に糸を通し、夢中で縫い合わせて、、、
なんとかズボン下の穴を閉じることができました!

私「おかーさーん! これ、やった。」

(母に完成品を見せる)

母「なぁに? 自分でやったの!?」

私「うん」

母「あらぁ〜、よくできたね〜!」

私にもできた!という達成感と、穴がふさがった安心感と、
母を驚かせた楽しさと、ほめられた嬉しさで、
誇らしさを感じた記憶が残っています。

その経験で自信がついた私はやる気満々で、
次の日、母に生地をもらいました。

作りたいものがひらめいたのです🌟
エプロンです。

胸あてがなくて、布に紐をつけて後ろでしばるデザイン。
エプロンというより、サザエさんの前かけですね。
しかも、そのエプロンにポケットをつけるつもり。

まど・みちおさん作詞の「ふしぎなポケット」という歌があって、
私もそんなポケットがほしいなあと思っていました。
その歌に出てくる夢のようなポケットを、私が作ろう!

やれるとかやれないとか、考えていませんでした。

のびのびと自由に、切ったり縫ったり。

作っているうちに、私はゾーンに入っていました。

頭の中に、ビスケットの歌が繰り返し流れ、
エプロンの完成形とポケットのからくりの仕組みの映像が浮かび、
ただそれだけを思って手を動かす状態に入っていたのです🤩

このエプロンに、ポケットをつけよう!

そうだよ! そのポケットの裏側に隠しポケットを付けること、できるよ!

♪ポケットのなかには ビスケットがひとつ♪

『ふしぎなポケット』 作詞 まど・みちお

隠しポケットにビスケットを入れて

妹に手品のようにみせて驚かせよう!

♪ポケットをたたくと ビスケットはふたつ♪

『ふしぎなポケット』 作詞 まど・みちお

ビスケットは自分で用意しなきゃいけないけど。

きっと妹はビックリするぞ〜!

♪そんなふしぎな ポケットがほしい♪
♪そんなふしぎな ポケットがほしい♪

『ふしぎなポケット』 作詞 まど・みちお

布をハサミで切って 針を使って大きな縫い目で
表にポケットつけて ポケットの底に穴を開けて
裏側からは 隠しポケットつけて

表のポケットの底の 秘密の穴から
裏側の隠しポケットにつながっているんだ

ただただ、完成形を思い描いて、その形に近づけることに夢中でした。

やがて、ちゃんとヒモの付いた、見た目にはふつうのエプロンを
どうにかこうにか、自分で思い描いた通りに作り上げました〜!👏
きれいかどうかはわからないけれど、その当時の私には完璧でした。

さっそく隠しポケットにお菓子をしこみ、妹に披露です。

(私、エプロンを着けて登場。妹にポケットの中をのぞかせる)

私「い〜い? 見て。このポケットの中に、なにも入っていないでしょ?」

妹「うん」

私「このポケットをたたきます」

妹「うん」

私(・・・よいしょ、よいしょ)
(隠しポケットからお菓子をひねり出す)

私「ほら! なんにも入ってなかったのに、お菓子出てきたよ!」

妹「わ〜!」

妹も喜んでくれて、ポケット作戦大成功!
そのあと、二人でお菓子を食べました🍪
私はまたまた誇らしさを味わい、大満足でした😊

自分で思いついたものを形にできるって、おもしろかった!
作るのが大変かどうかなんて、まったく気にしていませんでした。
私が作ったものを家族も喜んでくれて、嬉しくていい気分でした。

現在でも、まわりに無理だと言われても、
私には無理だと思えないことがあります。

「ないなら自分で作ればいい」

この感覚は、
小さい頃にのびのび自由に作らせてもらって
養われたのですね。

「完成したものを、みんなで楽しんだり喜んだりするのが嬉しい!」

この最初に縫いものをした成功体験は、ふゆあの原点です💖